​祈り雲が大切にする三つのこと~その参~

​至高の良材を使う

​木曽の森から

特に鉋をかけたばかりの木曽桧の木肌の美しさは人の心を吸い込むかのような魅力を放っています。
そして、その切り口から漂う高貴な香りが工房に満ちる時、まさに「至福の瞬間」を私たち職人に与えてくれます。


【香りもお届け】
祈り雲を薄紙に包み箱に入れお届けするのは、この木曽桧の香りも出来るだけお届けしたいという想いからです。
薄紙で包んだ方が紙の繊維の中に香りの粒子が残り、香りが保持されやすいのです。そういった理由からビニール系のもので包むことはありません。
削りたての時の香りそのままをキープすることは難しいですが、もし、祈り雲をご購入なさった時は、箱を開けた後、お顔を少し近づけて薄紙をめくってみてください。
お届けする祈り雲は長くても2カ月以内に完成されたものですので、必ず香りが残っていると思います。
ものによっては濃厚な木曽桧の香りをお楽しみいただけます。

【厳しく職人を試す木曽桧】
さて、祈り雲はそんな木曽桧から彫り出されたモダンな神棚ですが、
素材の良さに甘んじてはいけません。
当然のことではありますが、良いものを作る中で重要なのは、素材ではなくそれを活かす腕です。
それに実は、作る工程において、木曽桧は職人泣かせな木でもあるのです。


一般的に普及している神社の社殿を模したタイプの神棚には木曽桧が多く用いられているのに対し、
彫刻鑿を駆使して形にする立体的な神棚に限っては木曽桧が使われていない。それは、木曽桧を立体彫刻品として仕上げることがいかに困難であるかを意味しています。
木曽桧は値段も高価という事もあって、自信のない職人は始めから手を出しません。
高度な技術が求められる「職人の実力が試される木」と言っていいでしょう。

 【美しいからこそ繊細な木曽桧】
具体的に何が難しいのかというと、その繊細さです。
ふとした隙にうっかり逆目(木目に逆らった方向)から鑿を入れてしまうと、パリッと割れてしまうので、木目をしっかりと読む経験と勘が求められます。
これがケヤキやホオ、クス、サクラなどの広葉樹ですと粘りがありますので割れにくく、多少のミスで材料が台無しになる事はありません。

もう一つは切れる鑿でなければ許されないという事です。
柔らかい木なのに切れる鑿でなければいけないと聞くと、不思議に思われるかもしれませんが、
桧を含む針葉樹全般の特徴として、
材料の密度の小ささに対し繊維質が丈夫なので、繊維を横から断ち切る、いわゆる木口面では切れる鑿でなければ、絶対にきれいに仕上げることはできません。

刃物の研ぎを理論的にまた体感として習得した職人でなければこの「桧の木口」をきれいに仕上げる鑿を研ぎだすことは難しいです。


【厳しさの先にある美】
少しでも切れない鑿でこの木口面を切ったらどうなるかと言うと、白くなります。
力の入り具合でその白さに濃淡ができるので、見た目は汚くとても人に見せれたものではなくなります。
さらに切れが悪い場合は、断ち切れなかった繊維が横に倒れるようにして木口面を荒らし、朽ちたスポンジのような見た目になります。
こうならない為には、ただ切れる鑿を研ぐ。これしか方法がなく、職人に一切の逃げ道を与えない厳しい素材でもあります。
それだけに妥協を許さず仕上げ切った木曽桧の作品には、妖艶ともいえる美しさと、厳しさをくぐり抜けた力が宿るかのようです。

語り尽くすことが難しいほどの魅力を持った木曽桧。
祈り雲はそんな木曽桧から作られています。

 

​ここまで読んで頂きありがとうございました。

​もっと祈り雲の制作について知りたい方は、下の記事も、合わせてご覧ください。

祈り雲が大切にする三つのこと

~その弐~​

​職人のかたち

祈り雲が大切にする三つのこと

~その壱~​

見えないところに

​こだわる

祈り雲の素材に木曽桧を使う理由は、
神棚に使う素材として木曽桧以上のものがないからです。
伊勢神宮の社殿の御用材であることはよく知られていますが、現在でも神事に使われています。
そして、木曽桧を含む「桧」は日本書紀や古事記にも記載があるほど日本人に古くから親しまれています。

材料の強度や加工のし易さで見れば、木曽桧以上の木は多くあります。
それでも木曽桧が神棚の素材として最も重宝される理由は、前述のように神棚素材に相応しい格式やストーリーを持っているからでしょう。


【職人が見とれる木肌の美しさ】
ところで、古代の人々が何故この木曽桧を社殿に用いたり神事に使おうと思ったのでしょう?
様々な理由が考えられますが、
職人として数々の木材を見て、手で触れてきた私が思うに、
木曽桧の「木肌の美しさ」もその理由の一つであると思います。

赤身の部分は淡いピンク色。ピンクなのにとても気品があり社殿にふさわしい「清さ」が漂う色です。
よく切れる鉋で、木肌を滑らかにすると、暫く動きを止め溜息とともに、その美しさに見とれてしまうことがあります。
これは大げさな話ではなく、職人であれば誰でもそういう事があります。

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